タートルアムレット
アムレット(Amulet)とは、お守りのことです。
ラコタのビーズワーカーでアムレットを作る人は結構います。
作者によって同じアムレットでも、その人の個性があって、面識のあるアーティストの作品は、見ただけでほぼ作者がわかるくらい、独特の雰囲気があります。
ラコタの昔伝えで訊いたのですが、赤ちゃんが産まれたら、アムレットを二つ用意するそうです。うち一つはクラデルボード(おぶい籠)に括りつけて外においておきます。すると、赤ちゃんをさらいに来た魔物は、アムレットを赤ちゃんと勘違いしてさらっていってしまいます。それで、残されたもう一つに赤ちゃんの臍のをを入れて「お守り」として持たせる。そんな伝承です。こうして以来、危険な魔物は赤ちゃんに近づかず、いい人生をおくれますようにと願いながら。
女の子にはタートル(亀)、男の子にはリザード(とかげ)、そして双子ならスネーク(蛇)です。「蛇」の「双子」は、あるビーズワーカーに聞きました。蛇も男の子にという人もいますが、曲がった蛇の身体の胴と尻尾にひとつずつ臍のをを入れるといった話しがずいぶん気に入って、以来私は蛇は双子に、と思っています。
ビーズワーカーにはロマンチックな語り手もいて、リトルサンダーもその一人です。
上品で優雅な物腰の婦人で、挨拶の握手はほんの少し手のひらに触れる程度で、強く握ったり振ったりはしません。「これがラコタの本来の握手よ」と言ったことがありました。もしかしたら「ラコタの女の人の」と言ったのかな。今度ちゃんと聞いてみます。
彼女は、このアムレットを私に渡すとき、独特のふわふわした物言いでこんなふうにいいました。
「男の子はリザードなの。とかげをよく見て御覧なさい。いつも地面に張り付いて、大地の震動を感じている。だから昔はトカゲが顔を向けた方向になにかがあると言われていたの。たとえばバッファローの群れが。男たちはその方向に駆け、獲物を狩っていた。とかげは、常に獲物をさがす、強い男のもの。タートルは、じっくり、焦らず、危険な狩の成果を待つ賢い女。考えてもみて!狩りをして荒々しい一生に惹かれる?女の方がいいにきまってるじゃないの」
最後のコメントは、彼女が大切に細工したアムレットを手渡すときのお得意のジョークかもしれません。細い柔らかい声で楽しそうに話すので、ついつい引き込まれてしまいます。
大切なお守りをこんな愉快なおしゃべりと一緒に受け取れたら、ずっといい気分で過ごせそうな気がします。
ところで、はたして彼女は、リザードを手渡すときには、なんとコメントしてるのかなと興味津々です。
「タートルの平和な長い人生も素敵だけど、外の風に吹かれて常に獲物を追う刺激的な人生って、なんて勇敢なの!あぁ、男に生まれてみたかったわ」なんて、言ってるのではないかと想像しているわけです。
こんなふうに、おはなしの上手なラコタインディアンが多いのは、文字を持たず、口承で文化を伝えてきたラコタのDNAなのでしょうか。
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