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Vickのジッポー

Vick Youngはロデオの名手だった。

浅黒い肌に引き締まった体躯に、ウェスタンシャツやカウボーイハットはよく似合う。

奥さんのCathyの母親は、ラコタの有名なクイルワーカーとしてビデオにも登場している人だが、既に亡くなっていて、生前会えなかったのがとても残念です。

この夫婦、ともにたいへんトラディショナルなクイルワークを作る。

素朴で、派手な装飾もなく、いかにもラコタの人々が日常に使う感じのクイルワーク。

この写真は、Vickの作った、クイルワーク(ヤマアラシの針細工)ジッポーライターケースだ。

今日は、このジッポーライターケースにまつわるお話し。

Vicklighter2

私が、Vick、Cathy夫妻と知り合ったのはもう10年以上も前になる。

だんだんと親しくなり、ローズバッドリザベーションに行くときは、よく二人の家に寄るようになった。リビングのソファーに腰をおろし、マグカップいっぱいの熱いコーヒーを入れてもらい、トツトツと語る二人の話を聴いたり、子供たちと馬に乗ったり、川遊びをしたり。

ある日、Vickがジーンズのポケットからジッポーライターをとりだした。

彼の節の太い手に握られていたライターには、やまあらしの針細工がほどこされていた。やまあらしの針は色褪せて、ところどころ外れて芯のローハイドがむき出しになっている。

私はずっとラコタのクイルワークを探し続けてきたが、こんなのは初めてだった。

VickとCathyの作品群にも登場したことがない。

Vickの手のひらで汚れて褪せたジッポーライターは、彼が仕事終わりにソファーに身を沈め、窓の外にリザベーションの風景を眺めながら、また、馬の飼葉の合間に一服しながらと、毎日使われてきた愛用のライターだ。

「これは、Cathyが結婚記念日に作ってくれたんだ。そりゃ驚いたし嬉しかったさ。それ以来ずっと使ってるんだ。とっても気に入ってる。後で俺も同じものをCathyのために作ったんだ。ちょっと遅れたけど結婚記念日のプレゼントとしてさ」

私がこんないいストーリーに飛びつかないわけがなかった。ハイエナのような奴である。

「大変恐縮ですが、その思い出の品、私にも作ってもらえないでしょうか」

彼らはにっこり微笑んで了承してくれた。もちろん日本に住む誰かがそれを買って、またVickのように気に入ってくれて、色褪せクイルの外れるまで愛用にてしてくれるのも知っている。それがもしいい思い出ならみんなでシェアしようじゃないか。

その人は日本の狭い窮屈な喫煙室で一服しながら、同じ時間に平原が広がっている風景のあることを思うだろうか。そろそろ禁煙しなくちゃなと思いながら、ポケットのライターのクイルの馴染んだ手触りを確かめたりするかもしれないな。

それだってずいぶん素敵な話しだ。

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