ネイティブ アート
絵本作家(代表作100万回生きた猫)、作家、エッセイストとして知られる佐野洋子さんの本を読んでいます。
その中に、興味深い記述をみつけました。
アメリカに行った際、先住民の描いた絵をみつけたときの記述です。この絵は、おそらくプレーンズインディアンのものと思われます。
以下は佐野さんが書いた文章を書き写したものです。
「いつかアメリカで、アメリカ先住民が150年以上前に描いたという絵を見た。
ヨーロッパ人から誰かが紙と鉛筆を手に入れたらしく、ノートの綴じ目がブツブツとあって、しみなんかもたくさんついていた。
先住民はそれに、白人との戦争の絵を描いていた。
すごく下手で、すごくいいのだ。
血なんかがピューピュー飛び散っている。 馬に乗っている先住民は、体の中を鉄砲の弾が突き抜けていっている。 馬はまゆ毛がある。 白人の体には矢がはりねずみみたいにつきささっている。
それが実に静かで、ひっそりとしているのだ。
古道具屋の額の中に入れて売っていた。 連続絵なのだ。
私の有り金全部はたいても連続絵は買えなかった。
一枚買っても仕方ない。 私は未練たらたらで絵の前を離れた。
それまで私は絵を買うという事を一度も考えたことがない。
家に絵を飾るということは決してない。
すごい絵は美術館でみるのが一番良いのだ。
私はあの先住民の描いた戦争の絵を買ってどうするつもりだったのだろう。 どうしてほしかったのだろう。
今考えても又見たいのだ。
考えてみれば先住民と白人の戦いは血なまぐさい、深刻なものだったにちがいない。
そして、それを下手くそな絵で描かずにいられなかった先住民の思いというものは私なんぞの考えが及ぶところではないだろうと思うが、描かれて血がピューピューと飛び散っている絵は、見るとフ、フ、フ、と笑いたくなってしまうのだ。
ナイーブアートというものは、どこかでフ、フ、フ、と笑って感動してしまうものをいうのですね。
それがどんなに楽しいテーマでも、どんな陰惨なテーマであろうと。」(新潮文庫 佐野洋子著「覚えていない」より抜粋)
夜中にこの文章に行き当たり、私もフ、フ、フ、と笑ってしまいました。
そして、私が出会い購入を断念した高価な絵を、また思い切って手に入れた愛着の一枚を目の前にしたときの感動をまた思い出すのです。
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